不安神経症(全般性不安障害)

不安神経症(全般性不安障害)
不安神経症(全般性不安障害)

不安神経症とはどんな病気?

私たちは仕事や人間関係、生活上において心配になることや不安を抱えてしまうことがあります。多くの人はその心配や不安に対して、うまく対処して過ごしています。
緊張する場面においては、緊張感でいっぱいになり動悸が激しくなったり手に汗をかいたりしますが、誰もが感じるもので特に病気であるとは言えません。
不安神経症(全般性不安障害)とは、このような生活のなかで感じる心配や不安を慢性的に持ち続けてしまう病気です。心配や不安の程度は、誰もが感じるものよりもはるかに超えるもので、日常生活において支障をきたし、大きな影響を与えるものになってしまいます。
つまり心配や不安の信号が大きくなってしまったり、必要以上に心配してしまったり、不安になってしまうことが「不安神経症(全般性不安障害)」と言えます。
世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類第10版(ICD-10)」や、米国精神医学会の「精神障害の診断と統計の手引き第5版(DSM-V)」において、この不安神経症をさらに細かく分類しています。
どのような特徴があるのかご説明いたしましょう。

不安神経症(全般性不安障害)

『不安神経症(全般性不安障害)』とは、特定の状況や特定の要因によって引き起こされるものではなく、あらゆる状況において強い不安や心配を抱いてしまう不安神経症です。
不安や心配になる理由がはっきりしている訳ではなく、あらゆる場面やシーンにおいて度を超えた不安感を抱いてしまいます。
何か一つでも気になることがあれば、その状況において最悪な状況まで想像してしまい、不安でたまらなくなり落ち着かず、仕事や勉強に集中できなくなってしまいます。
またあまりにも不安や心配が大きくなってしまうことで、自律神経にまでも変調が伴ってしまい、ゆっくり休んでも疲れが取れなかったり、うまく眠れないようになってしまいます。その症状が悪循環となってしまい、日常生活全般に支障をきたしてしまいます。
発症は若い女性に多く、男性の約2倍であるといった報告もあり、10代で発症することも珍しくありません。

症状の現れ方

「不安」は私たちにとって自然の能力であるといえ、不安を感じることによって物事に備えようとしたり、リスクを避けることができます。
そのため気持ちが落ち着かないことや、ドキドキしてしまうこと、心細くなってしまうような不安感や緊張感が高まってしまうのです。
しかし、そのような症状は、不安に感じる原因があれば何の問題もありません。では不安神経症(全般性不安障害)ではどのように問題が生じるのでしょうか。

「不安」の現れ方

不安の現れ方において問題になるのは理由もないのに病的な不安が起こること、あるいは何かがきっかけとなって生じた不安に対して不適切な行動がみられるということです。
そのような状況が起きてしまうと、生活を営む上で障害となってしまいます。
不安神経症(全般性不安障害)の症状は、決まった状況や特定の場所、人前などで症状が現れる特徴があります。一度そのような状況において症状が現れてしまうと、「次も現れるのじゃ・・・」と不安や恐怖心が強くなってしまいます。
そのためその不安感や焦り、恐怖心から逃れるために同じ状況や行動を避けようとするために不適切な行動がみられるようになるのです。

心身に対する症状

不安神経症(全般性不安障害)の症状は『強い不安』によって落ち着かなくなったり、緊張し続けていたり、些細なことが気になったりします。
そのような不安やストレスによって、身体にまで症状が現れることも少なくありません。
不安神経症(全般性不安障害)の症状においては、自律神経のバランスがうまく保つことができなくなっています。そのため自律神経失調症状であるめまいや頭痛、動悸、肩こり、冷え、のぼせ、倦怠感などがみられることが多くあります。
また強い緊張状態によって、筋肉が硬直したような状態(筋緊張症錠)が現れることがあります。筋肉をうまくほぐして緩ませることができず、身体のふるえやけいれんがみられることもあります。

うつ病、心配性との違い

不安神経症(全般性不安障害)は『強い不安』によって引き起こされる病気で、不安が生じる「うつ病」や「心配性」との違いが分かりにくいこともあります。
不安神経症(全般性不安障害)を診断する場合においては世界保健機構(WHO)の国際疾病分類である「ICD-10」、米国精神医学会の疾病分類である「DSM-5」を活用して、その不安が異常なものかどうかによって判断されます。

うつ病との違い

うつ病においても不安神経症(全般性不安障害)と同じように不安症状を伴います。気持ちが落ち込み、意欲がなくなるなどの症状によって、抑うつ症状が強くなります。しかしうつ病の回復によって、症状も緩和します。
不安神経症(全般性不安障害)は、特定の状況において強い恐怖や不安を感じ、その状況を避けたり我慢することによってさらに不安が強くなります。その不安は自身でコントロールすることができず、毎日引き起こされます。機能障害も引き起こしており、うつ病をはじめとしてほかの精神疾患などでは説明のできない症状であるといえるのです。
ただし、不安神経症(全般性不安障害)を持つ人には、うつ病を併発させていることが多く、逆にうつ病の人が不安神経症(全般性不安障害)を併発させることも多いことが知られています。

心配性との違い

「心配性」とは、もともと持っている気質のことをさしており、几帳面すぎて細かいことが気になる人のことをいいます。普通ならば気にしないようなことも気になって不安になってしまうのです。心配しすぎる癖であると言われることもあります。
不安神経症(全般性不安障害)との一番の違いは、「日常生活に支障が出ているかどうか」にあるといえます。
その不安を自分自身でどうすることもできず、不安によって何もできなくなってしまったり、引きこもってしまうような状況が心配症との違いと言えるでしょう。

その他の神経症の種類

ヒステリー性神経症

ヒステリー性神経症は現在「解離性障害」や「転換性障害」と呼ばれています。
強いストレスを受けることによって自己防衛を起こすようになり、自分自身の意識を切り離すようになるという症状の特徴があります。
『解離』の具体的な症状として、自分がしたにも関わらず全く覚えてなかったり、 自分自身が誰なのか理解できなくなったり、自分の中に何人もの自己の存在を持ったりすることがあります。
『転換』の具体的な症状としては、体の一部が動かなくなってしまうことや、感覚や視覚、聴覚、嗅覚が部分的に麻痺するようなことがあります。
解離は自分自身の意識が本来あるべきところになくしてしまうことによって自己防衛を図り、転換は体に起きる症状によって不安から逃れようとするものです。
この『解離』と『転換』については、別々に引き起こされることもありますが、同時に出現することも珍しくありません。
これらをまとめて「ヒステリー症状」と呼ばれていました。
発症は10~30歳までの人に多く、女性に多いことが特徴です。一過性の場合もありますが一年未満に再発することが全体の2割程度存在し、慢性化してしまうこともあります。
きっかけとしては子供の頃に受けた虐待や放置、裏切り、暴力などとても強いストレスが引き金となって、無意識的に引き起こされます。
最近の研究では、脳の機能障害が要因となっていると考えられています。

強迫神経症

強迫神経症は『強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)と呼ばれることもあります。
自分でも無駄だと感じているものの、明らかにやりすぎた行為によってストレスとなるものです。具体的には次のような行為で強いストレスとなってしまいます。

  • 戸締りや火の元などを何度も確認しているのに、同じ確認をしてしまう
  • トイレを済ました後に、汚れが気になって何度も手を洗ってやめられない
  • 無駄だとわかっている物でも、後悔することが不安になって捨てられない
  • 外出先から帰宅すると、まずシャワーを浴びて着替えをしなければ気が済まない
  • 自分だけのルールがあり、その通りに事が進まないと強い不安に陥ってしまう
  • 買い物依存ではないのに、買わなければ困ってしまうんじゃないかと不安になり買い続けてしまう

明らかにやりすぎている行為であるため、自分自身でもやめようとするのですが、うまくやめることができません。

例えば手洗い一つにしても1時間程度洗い続けているということもあります。このようなことが起きてしまうと生活で不便さが出ることは当然です。
わが国では精神科の外来に訪れた人の4%程度が強迫神経症であることがわかっており、10~20代の若者に多いのが特徴です。

抑うつ神経症

抑うつ神経症は「気分変調症」とも呼ばれています。「神経症性うつ病」と言われていたこともあります。
主な症状としては、抑うつ症状が1日中続くもので、2年以上(小児や青年では1年以上)といった長い期間において持続することが特徴です。
気分変調とは不機嫌という意味がありますが、その言葉の通り、持続する抑うつ症状によってイライラしたれい、怒りっぽくなったり、意欲や活力がなくなることもあります。
そのため症状が出現することによって、引きこもりになったり、状況に応じた行動や判断ができなくなり生活全般において困ってしまうことになります。
うつ病と同じような症状がみられますが、まったく別の疾患だと考えられています。常に気分が落ち込んでいるという訴えができ、うつ病ほど重症化せず、長い経過をたどることからうつ病と区別されています。
症状を自覚しながらも生活し続け、自覚してから10年ほど経過した後に受診するということも珍しくないものです。ただしはじめはうつ病と診察されてしまうことも多く、長期間持続していることが確認できた時点で抑うつ神経症と診断名が変更されることもあります。
抑うつ神経症の罹患率は5~6%程度であると考えられており、発症率の差は女性がやや多いと言われています。

心気症

心気症とは、「自分は癌や心臓病ではないか」という思い込みが強く、観念にとらわれた病態です。自ら体の状態を調べ、具体的な病名をあげ、自分はその病気にかかっていると訴えかけるケースもあります。抑うつや不安などの症状が現れる場合もあります。
身近な人が亡くなったり、家族が重篤な病気にかかってしまったりしたときなど強い心理的ストレスが心気症の発症の原因になることがあります。
「重篤な病気にかかっている」といった状態は、医学的観点で診察をし、異常がないと保証されてもその症状は長く続きます。強い不安や恐怖を日々感じているので、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
また、精神疾患の一つとされているので、うつ病や不安神経症(全般性不安障害)も合併しやすいといわれています。

その他の主な不安障害について

パニック障害

『パニック障害』とは、予期しないパニック発作が特徴的な症状で、突発的に激しい動機や苦しさ、息苦しさなどを伴った強い不安に襲われてしまうものです。
あまりの苦しさに「死んでしまう」「心臓発作かもしれない」と考えてしまうほどで、救急車で搬送されてしまうこともあります。ただ病院に到着した頃には症状はおさまっていることも多く、検査をしても特に問題となるような内科的な病気は見つかりません。
しかしこのような予期しないパニック発作を繰り返してしまうことになり、またあのパニック発作が起きるのではないかと常に不安感が生じてしまいます。
その結果、発作を繰り返すたびに不安感が強くなっていき、症状が悪化してしまいます。
そのためパニック発作を起こしてしまったときのことを考えて、公共交通機関に乗れなくなったり、助けを求められないような広い場所に行けなくなったり、お店や映画館などに行けなくなる「広場恐怖」を伴うようになってしまいます。
つまりパニック発作を起こすと、また発作を起こしてしまう恐怖である予期不安が強くなり、特定の場所に行けなくなる「広場恐怖」を伴うことになります。

物質誘発性不安神経症

『物質誘発性不安神経症』とは、医薬品や薬物、毒物などの影響によって、パニック発作を起こしてしまうという障害です。
この病気は非合法である物質だけに関わらず、一般的に販売されている物質においても発生の可能性があります。
例えばアルコールやカフェイン、抗不安薬、抗うつ薬などによっても、物質の中毒や離脱に関連して不安神経症が起こりうると考えられています。
治療に関しては、本当にその物質や医薬品によって不安神経症を招いているのか注意深く観察する必要があります。
パニック発作が特定の物質が原因であった場合、その物質を取らないようにしたり、治療を中断することで軽快することが多いです。ただしその物質や医薬品が、どの程度の期間で離脱できるかによって、軽快や寛解の期間は変動します。

恐怖症

特定の状況において、特定の対象に対して強く恐怖を感じるものが『恐怖症』と呼ばれています。この恐怖感は自分でコントロールすることができません。
あまりの恐さや不安に「おかしくなってしまうのではないか」とパニックになってしまうことや動悸、発汗、呼吸が苦しくなるといった症状を伴うことがあります。
しかしこれらの症状は特定の状況や人間関係、環境などだけで、それ以外はまったく普通に生活できるという特徴があります。
恐怖症は「社会恐怖」「広場恐怖」「閉所恐怖」「高所恐怖」などに分けることができます。

「社会恐怖」

対人恐怖と呼ばれることもあり、人前で話すことや人に注目されることに強い不安を感じます。

「広場恐怖」

慣れない場所や苦手な場所、遠い場所などで恐怖感が強くなり、パニック症状を起こしてしまいます。

「閉所恐怖」「高所恐怖」

エレベーターや乗り物など、狭い空間のような特定の場所や高い場所によって強い不安を起こしてしまいます。

不安神経症の主な症状

不安神経症(全般性不安障害)

不安神経症(全般性不安障害)では、特定の状況や場所、人前などにおいて極端に緊張感が高まってしまい、身体にさまざまな症状が現れ、不安や焦り、恐怖がとても強くなってしまう特徴があります。
その症状は「また現れてしまうのではないか」と思うような、自分自身にとってはとても苦痛で恐怖になるもので、次第にその症状を避けるために同じ状況や行動を避けようとします。
これらの症状は日常生活でのさまざまな出来事や人間関係などにおいて、過剰な不安やストレスが継続的に積み重なることがきっかけとなります。
ストレスとなるものはさまざまですから、原因がはっきりとしないものも多く、ただ不安だけを感じるような場合も少なくありません。
そのような不安やストレスは、なかなかうまく対処することができず、そこから逃れられないという不安や焦りから症状を発症させてしまうのです。
では不安神経症の症状にはどのようなものがあるか、身体症状と精神症状に分けてご紹介していきましょう。

不安神経症(全般性不安障害)

身体症状

  • ゆっくりと休んでいるのに疲れがとれない
  • すぐに疲れてしまう
  • 頭痛、頭重感、頭の圧迫、しびれ感などがひどい
  • 肩こりや筋肉の緊張を強く感じる
  • めまい、頭が揺れる感じで歩くのが怖い
  • 動悸がひどく全身で脈拍を感じたり息切れがある
  • 急な悪寒や熱感が起きる
  • 便秘や下痢、頻尿が頻繁に起きる
  • のどがつかえた感じがしたり吐き気がある

不安やストレスによって張りつめた状態が続いてしまうと、大きなエネルギーを消耗してしまうことになりますから、さまざまな身体症状が現れるようになります。
不安やストレスが軽減されない限り、これらの症状が治まることもありませんから、身体の疲れがどんどん蓄積し、パニック障害などの精神症状も引き起こす原因となってしまいます。
身体症状には大きく分けて2種類の症状がみられます。

1、自律神経症状

自律神経症状とは、自律神経失調症にみられる症状がさまざまな身体症状として表れるものです。
自律神経とは交感神経と副交感神経で成り立っており、うまく身体のバランスを保つことができるようになっている神経です。
不安神経症による自律神経症状においては、強い不安やストレスによって自律神経がうまく働かないようになって、さまざまな不調が現れるようになります。
のぼせや頭痛、めまい、耳鳴り、息苦しさ、動悸、肩こり、食欲不振、下痢・便秘、手足の冷え、しびれ、倦怠感などが特徴的な症状です。

2、筋緊張症状

筋緊張症状とは、筋肉を収縮させた後に弛緩する(緊張をほぐして緩める)ことができない状態のことをいいます。
わたしたちの筋肉は、ものを握ったり、掴んだりする際には、筋肉を収縮させることでその行動がうまくできるようになっています。
しかし筋緊張症状の場合においては、筋肉が適切に伸び縮みすることができません。
そのため肩こりや頭痛、腰痛などがひどくなったり、身体のふるえやけいれんが認められることもあります。

ストレスが軽減することでこれらの症状も改善するケースもありますので、精神科や心療内科などの専門の医療機関への受診をお勧めします。

不安やストレスについて
ぜひご相談ください!

精神症状

  • そわそわして常に落ち着かない
  • 注意が散漫になってしまい集中することが難しくなる
  • 常に緊張している状態でリラックスできない
  • イライラして怒りっぽくなる
  • 根気がなくなって疲れやすくなる
  • 些細なことがとても気になり、とりこし苦労が増える
  • 寝つきが悪くなり、睡眠状態も悪くなる
  • 人に会うのが煩わしくなり悲観的になる
  • 記憶力が悪くなった感じがする

不安神経症の症状は慢性的な不安やストレスがきっかけで発症しますから、さまざまな症状となって現れることが特徴です。
特に不安神経症と診断される基準としては、「落ち着かない」「常に緊張している」「些細なことがとても気になる」ということが挙げられます。

不安やストレスについて
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不安神経症の患者数

精神疾患によって精神科や心療内科にかかる患者数は、どんどん増えている状態ですが、その中で不安神経症の割合も多くなっています。
病院にかかっていない潜在的な患者を含めると、国内では300万人を超えるのではないかと推定する専門家もいるくらいです。
わが国で一般の人を対象にした疫学調査においては、何らかの不安神経症を有する割合を調べてみると障害有病率で9.2%であることが分かっています(平成14~18年度 厚生労働省の調査)。
不安神経症の内訳を見てみると特定の恐怖症が最も多く3.4%(恐怖症全体では約5%)、不安神経症(全般性不安障害)1.8%、PTSD1.4%、パニック障害0.8%となっています。
アメリカで大規模に調査したデータによると、生涯有病率はかなり高く31.2%(2001~2002年ECA調査)となっており、この数字からすると10人に3人は経験する病気であるといえます。
このECS調査によると、不安神経症は男性よりも女性に多いことが分かっていて、男性が25.4%であるのに対して、女性が36.4%となっています。さらにパニック障害の場合では、女性は男性の2.5倍であることも明らかになっています。

不安神経症になる原因

不安神経症が発症する原因は、まだはっきりと解明されていませんが、脳機能の障害、ストレスや心的外傷、身体的な疾患などが複雑に関わっていると考えられています。
かつては心の病気と捉えられていて、ストレスなど心理的な原因によって引き起こされるものと考えられてきたのですが、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることによって不安や心配を誘発しているのではないかという説が有力になっています。
現在、考えられている不安神経症になる原因について、詳しく見ていきましょう。

脳機能障害の要因

近年の研究では不安神経症は脳の機能障害によって引き起こされていると考えられるようになりました。
脳内にはセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されており、精神を安定させストレスを軽減させる働きがあることが分かっています。そのため「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。
不安神経症の場合、扁桃体や大脳皮質(前頭前野)、海馬や大脳辺縁系などのセロトニンのバランスが悪くなり、不安を誘発させていると考えられているのです。
特に脳の扁桃体と呼ばれる部分においては、不安や恐怖を引き起こす発信源であり、セロトニンの活動によって調整されなければならないのです。
セロトニンの働きが弱まってしまうと、脳の扁桃体から不安や恐怖といった信号が過剰に発信されるようになります。
その結果として中脳水道灰白質、青斑核、傍小脳脚核といった周辺の神経部位に伝えられ、自律神経の過剰な反応である動悸や呼吸促迫、手に汗を握るなどといったパニック発作の諸症状を引き起こすことになります。

心理的要因

不安神経症は、その発症のきっかけとして心理的な要因が関係しています。
症状は何の理由もなく発作に襲われることがありますが、過去に起きた体験であったり、ストレスに感じることであったり、親との別離体験であるようなケースが多くみられます。
例えば人前で恥ずかしい思いをしたという経験が強く残っている場合、その経験が強い不安や恐怖となってしまって、同じような状況において発作を発症させてしまうのです。
その背景には「失敗したくない」「恥をかきたくない」といった思いが強くあります。その思いが強ければ強いほど、失敗したときの不安や恐怖が大きくなり、動機や腹痛、冷や汗、震えなど身体にさまざまな症状が現れてしまいます。
もともと子供の頃から人前で話すことが苦手だった人が、社会人となり仕事でプレゼンテーションなどが必要になったときに発症することもあります。
うまく回避することで症状を一時的にコントロールすることもできますが、逃げ続けることで症状を悪化させてしまうこともあります。
このような要因によって不安神経症を発症させてしまう人を調べてみると、脳機能障害も見れれていることが多く、心理的要因がきっかけとなって脳機能障害を引き起こしているといえます。

社会的要因

私たちは生まれてきて、同じ環境で育ってきたわけではありません。そのため人によって、同じ物事でも受け止め方がまったく異なります。
例えば私たちの住む国と海外によっても考え方はまったく違いますし、家庭によっても大きく異なります。
そのためおおらかに考える人もいれば、几帳面に考える人もいます。
成育歴によって人の性格は大きくことなりますので、同じ状況であってもストレスに感じる人もいれば感じない人もいるのです。
そのため思春期に発症することが多く、本人も気づかないままどんどん症状が悪化してしまうことがあります。また病気であるという意識がなく、自分の甘えや怠けだと捉えてしまって、見逃されているケースも少なくありません。
特に子供から大人へと変わる転換期においては、不安を抱える要素も大きくなりますから、この時期には家族や学校、社会全体でサポートしていくことが大事です。

不安神経症の診断基準

不安神経症の診断基準
不安神経症の診断基準

不安神経症の診断は、身体的な疾患のように客観的に診断できるものではありません。不安や心配の程度は個人差がありますので、その不安や心配が異常であるかについてはとても判断が難しいのです。
問診においては、同じような症状が家族にもなかったのか尋ねることもあります。不安神経症の診断において家族歴は、診断の参考になるものです。
身体面においても診察を行って、不安や心配になるような病気が隠れていないか調べます。
その診察結果をもとに具体的な診断基準に基づいて評価を行っていきます。ポイントとしてまとめると、このような内容が診断基準となっています。

  • 不安や心配がほとんど毎日起こる
  • 不安や心配をコントロールすることができない
  • 不安や心配によって心身にさまざまな症状が現れている
  • 不安や心配が苦痛で機能の障害も引き起こしている
  • ほかの精神疾患で説明することができない

具体的な診断基準については、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類である「ICD-10」、米国精神医学会の疾病分類である「DSM-5」を活用されています。

1、「ICD-10」の診断基準

ICD-10においては不安神経症の診断基準を次のよう示しています。
患者は、少なくとも数週、通常は数カ月、連続してほとんど毎日、不安の一次症状を示さなければならない。それらの症状は通常、以下の要素を含んでいなければならない。

  • a.心配(将来の不幸に関する気がかり、「いらいら感」、集中困難など)
  • b.運動性緊張(そわそわした落ち着きのなさ、筋緊張性頭痛、振戦、身震い、くつろげないこと)
  • c.自律神経性過活動(頭のふらつき、発汗、頻脈、あるいは呼吸促迫、心窩部不快、めまい、口渇など)

小児では、頻回に安心させる必要があったり、繰り返し身体的訴えをすることがあるかもしれない。
他の症状で、とりわけ抑うつが一過性に(一度に付き2、3日間)出現しても、主診断として不安神経症(全般性不安障害)を除外することにはならないが、患者はうつ病エピソード、恐怖性不安神経症、パニック障害、あるいは強迫性障害の診断基準を完全に満たしてはならない。

2、「DSM-5」の診断基準

DSM-5においては次のように示しています。

  • A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。
  • B.その人は、その不安を抑制することが難しいと感じている。
  • C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)
    注:子どもの場合は1項目だけが必要
    • 1.落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
    • 2.疲労しやすいこと
    • 3.集中困難、または心が空白となること
    • 4.易怒性
    • 5.筋肉の緊張
    • 6.睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠)
  • D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  • E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。
  • F.その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない[例:パニック症におけるパニック発作が起こることの不安または心配、社交全般性不安障害(社交恐怖)における否定的評価、強迫症における汚染または、他の強迫観念、分離全般性不安障害における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における外傷的出来事を思い出させるもの、神経性やせ症における体重が増加すること、身体症状における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点や知覚、病気全般性不安障害における深刻な病気をもつこと、または、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容、に関する不安または心配]

参考:
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

不安神経症の治療方法

不安神経症の治療は、一般的に薬物療法・精神療法が中心となっています。
特に不安神経症の特徴的な症状である強い不安や心配については、脳の神経伝達物質であるセロトニンの異常によるものであると考えられていますので、神経伝達をスムーズにさせるように薬物治療を行います。
また同時に、不安や緊張を和らげることができるように、精神療法に取り組んでいきます。再発を防止し、社会生活に適応できるように自分自身の思考パターンを見つめなおすことが重要です。

薬物療法

不安神経症の治療においては薬物療法を積極的に取り入れられています。特に近年の研究においては、不安神経症の強い不安や心配が起こる原因として、脳の神経伝達物質であるセロトニンの異常であることと考えられています。扁桃体や大脳皮質(前頭前野)、海馬や大脳辺縁系などのセロトニンのバランスが悪くなり、不安を誘発させているのです。
セロトニンの働きを活発にさせるためには薬剤が有効で、主に抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や向精神薬のBZD(ベンゾジアゼピン)が用いられています。
SSRIとは、脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きを改善し、意欲を高め、不安や心配、憂うつな気分などを改善する薬として活用されています。
不安神経症においてはノルアドレナリンやセロトニンなどの働きが不調になることで、関与する神経が以上興奮を起こしてしまい症状が現れます。SSRIには、このような症状において改善効果が確認されています。
抗うつ薬として近年積極的に活用されている薬剤ですが、不安神経症においても第一選択として位置づけされている薬剤です。
BZDは抗不安薬であり、脳の興奮を抑えることで不安や緊張などを改善させる働きがあります。
不安神経症においては脳内のGABA受容体に刺激を受けることで脳に興奮が見られ不安や恐怖を感じるようになってしまいます。
BZDはGABA受容体の活動を高めることによって脳の興奮を抑制し、不安や恐怖といった不安神経症の症状を改善させる働きがあるのです。
これらの薬剤については症状が良くなっても消して自己判断でやめてしまってはいけません。不安神経症は再発するリスクが高いために、症状が良くなっても少しずつ薬を減らしていくようにします。
薬剤については必ず医師の指示通りに服用し、何か気になることがあった場合には医師に相談するようにしてください。

精神療法

不安神経症においては精神療法が有効とされており、「暴露療法」「認知療法」などさまざまな精神療法が用意されています。本人の症状に合わせて、さまざまな心理的サポートを行います。
医師との面談のなかで、どの精神療法が適切なのか、よく話し合いながら決定していきます。
「暴露療法」とは、強い不安や心配を克服していくために、恐怖を抱いている原因に直面させる治療法になります。不安神経症のなかでもパニック障害や広場恐怖に有効であると考えられています。
例えば広場恐怖に対しては、心理療法士に導かれて取り組むことで高い治療効果が得られたという研究結果もあります。心理療法士とともに行けなかった場所などに同伴し、自信を付けていくなかで時間や距離などを伸ばしていくというものです。
「認知療法」は、不安や心配は「最悪のことを考えてしまう自分のクセ」だという認知や思考の歪みに気付き、修正していくことで症状を改善させるという精神療法です。
不安になったときに浮かんだ考えに着目して、バランスのよい新しい考え方に変えていくことでストレスを和らげていきます。
ただし、このような考え方をする自分が悪いのではありません。
問題なのは考え方であって、考え方は変えることができるものです。自分らしく生きていくには、ストレスにならないような自由な考え方を身につける必要があります。

また、不安神経症はうつ病も発症している場合もありますので、その場合はうつ病の治療を一緒に行うことで不安神経症が改善します。
うつ病を発症している場合、身体に負担をかけない新たなうつ病治療もありますので、うつ病治療を専門としているクリニックに相談してみるのも良いでしょう。

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身体に負担をかけない新たなうつ病治療として「磁気刺激治療(TMS)」があります。
詳しくは下記をご覧ください。

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不安神経症の患者さん・
家族へのアドバイス

  • 不安神経症という病気を理解する
  • 正確な診断によって適切な治療を受ける
  • 不安や心配をコントロールできるようにする
  • 生活リズムを大切にして適度な運動を心がける
  • アルコールや嗜好品を控える

不安神経症は適切な治療を行っていくことで、改善する可能性があります。ただし病気に対して理解を深め、適切な治療に取り組むとともに、健康的な生活を心がけなければなりません。

不安神経症という病気を理解する

不安神経症という病気を理解する

不安神経症の症状である不安や心配は誰もが経験するものですから、本人も家族も病気であると考えないことがあります。また内科的な検査を行っても異常が見つかりませんから、自分の甘えや努力のなさと捉えて、必要以上に頑張りすぎてしまうこともあります。
不安神経症は精神疾患で、治療が必要な病気であるということを本人だけではなく家族も理解し、適切な治療を受けることが大事です。

不安神経症という病気を理解する

正確な診断によって適切な治療を受ける

正確な診断によって適切な治療を受ける

不安神経症は正確に診断されて、その診断に応じた適切な治療を受けなければ改善がみられないことがあります。
検査によって内科的な疾患が見つからなかった場合に、暫定的に自律神経失調症などと診断され薬が処方されることがあります。しかしこのような治療ではよくならないことが多いのです。
必ず気になることは精神科や心療内科など専門医に相談し、正確な診断と適切な治療を受けるようにしましょう。

正確な診断によって適切な治療を受ける

不安や心配をコントロールできるようにする

不安や心配をコントロールできるようにする

薬剤によって治療を受けながら、自分自身で不安や心配をコントロールできるようにすることは可能です。自分自身の思考のクセに気付き、不安や心配ごとが起きたときにどのように考えるべきなのか、主治医に相談して指導を受けるようにしましょう。

不安や心配をコントロールできるようにする

生活リズムを大切にして適度な運動を心がける

生活リズムを大切にして適度な運動を心がける

不安神経症だけではなく病気を克服するためには、生活リズムを大切にして健康的な生活を送ることが大事になってきます。それだけでも自律神経を安定させて、免疫力を高めることができるからです。
健康的な生活リズムを送るには、食事・睡眠・運動の3つが大事になります。
バランスのよい食事を心がけるだけではなく、食事の時間にも気を付けます。
睡眠については寝不足にならないように注意し、良質な睡眠を心がけるようにします。
運動は体力向上というだけではなく、ストレス解消にとても有効になります。

生活リズムを大切にして適度な運動を心がける

アルコールや嗜好品を控える

アルコールや嗜好品を控える

不安なことがあるとアルコールに逃げてしまう、タバコやコーヒーが手放せないということは一般的にあることですが、それに依存してしまうのは良くないことです。
特に薬剤によってはアルコールの摂取によって、効果がなくなったり、効果が増強されてしまったりすることがありますから副作用のリスクが高まります。
タバコは害でしかありませんし、コーヒーも摂りすぎてしまうことで不安を増強させてしまうこともあります。

アルコールや嗜好品を控える

不安神経症について
よくいただくご質問

毎日ささいなことで不安になってしまいます。これは病気なのでしょうか。
不安神経症(全般性不安障害)という病気が考えられます。自分ではどうしようもないストレスを抱えていると、不安が強くなったり、疲れやすくなったり、怒りっぽくなったりします。さらに集中できなくなったり、眠れなくなったり、頭痛などの症状が現れることもあります。早めに精神科や心療内科での受診をお勧めします。
不安神経症(全般性不安障害)と診断されました。不安神経症は治るのでしょうか。
適切な治療をしていれば良くなる可能性が高い病気です。一般的な治療においては薬物治療や精神治療を中心に治療に取り組むことになります。通院や治療は気長に取り組む必要がありますが、少しずつ改善していく人も多くいます。
不安や心配が多いのは性格の問題のように思います。本当に病気なのでしょうか。
不安神経症は性格だけの問題ではなく、脳内の神経伝達物質の乱れによって不安などの症状が引き起こされることが分かっています。病気であると気付かないことも多いですが、適切に治療することによって強い不安から開放されていきます。
人の視線が気になって人前に出ることができません。病気なのでしょうか。
不安神経症の症状のひとつで社会恐怖と呼ばれるものです。対人恐怖と呼ばれることもあり、人前で話すことや人に注目されることに強い不安を感じます。早めに精神科や心療内科へご相談ください。
外出先で動悸が激しくなり死ぬんじゃないかと思いました。内科では特に問題は見つかりませんでしたが・・・。
パニック障害の可能性があります。パニック障害とは、予期しないパニック発作が特徴的な症状で、突発的に激しい動機や旨苦しさ、息苦しさなどを伴った強い不安に襲われてしまうものです。早めに精神科や心療内科での受診をお勧めします。

不安神経症は転帰の可能性も

不安神経症と診断を受けても、アルコールや嗜好品に依存しない、うつ病・うつ状態がみられたら早期診断と治療を行うこと等が、うつ病などを転帰するリスクを防ぐ可能性があります。
不安を感じるストレスは、生活する以上避けることは出来ません。
不安やストレスを避ける生活を考えるのではなく、病気を理解し受け止め、乗り越えるという意識をもつことが大切です。
もし、うつ病と診断を受けた場合は、うつ病の専門治療が必要となります。新宿ストレスクリニックでは、他の治療と併用ができる磁気刺激治療(TMS)を提供しています。
心身に負担の少ない治療法ですので、日常生活や社会生活に支障が少ない治療を望んでいる方におすすめです。お気軽にご相談ください。

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本 将昂

【監修】本 将昂医師

2011年京都大学医学部卒業。現在、新宿ストレスクリニックの名古屋院院長。それぞれの患者さんにとって何か最善であるかを考え、患者さんfirstの精神で治療を行います。
精神保健指定医 日本精神神経学会認定精神科専門医

新宿ストレスクリニックでは、うつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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